病院から一人飛びだしたナイト2000は、マイケルを求めて夜の街を走り回っていた。 “私はナイトインダストリー2000。オーナーは、マイケル・ナイト…。私はオーナーを守り、オーナーと共に事件の解決にあたる為に作られた。マイケルは? 私のオーナーはいったいどこへ行ったんだ。……データが見つからない?!” マイケルの居所を探そうとするのだが、マイケルの所在に関するデータを検索しようとすると、何かに邪魔されたようにそこに辿りつけない…。大切な所でロジックがルーブしてしまう…。 “マイケル…。私はどこへ行くのか…?” いつの間にかKITTはマイケルの家の前の通りに来ていた。 夜の住宅街は静かなものだったが、寝静まるにはまだ早い時間なのか、殆どの家の窓に明かりが灯っている。 しかしマイケルの家は暗く静まり返っていた。 KITTはサウンド・シンセサイザーを使ってマイケルの家に声をぶつけるように呼びつづけた。 “マイケル、マイケル。居ないのですか? マイケル!!” 始めは小さな声で呼んでいた。しかしその声は次第に大きくなって行き、あたりに響き渡った。いくつかの家の窓から家人が不審そうに顔をのぞかせている。 「おいハリー! ありゃ何だ?」 パトーカーで巡回中の警官が、道路の反対側に停まっているナイト2000を指して同僚に声をかけた。 「こんな時間にスピーカーで何かわめいてるぜ。とんでもない奴だ。見てやるか」 ナイト2000の後ろにパトカーを停めると、二人の警官は腰の銃に手をかけながら注意深く車内を覗いた。 「あれ? スコット! 誰も乗ってないぜ」 無人と分かって緊張を解くと、二人はナイト2000のウィンドに顔を近づける。 “マイケル! どこにいるんです?” 再びKITTが大音量でマイケルを呼んだ。スコット達はあわてて飛びのいた。 「な、何だ! ラジオか? 迷惑な奴だ。止めてやろう」 スコットがナイト2000のドアを開けようとノブに手をかけた。 「チッ! ロックされてるな」 “やめなさい” KITTが言う。 「何だって?」 スコットがハリーの方へ顔を上げて聞いた。 「何って?」 「今おまえ、やめろって言ったろう?」 「言わないよ、そんなこと」 スコットは首を傾げつつ、再びノブに力を入れてドアを引いた。 “やめなさい。あなたは私のオーナーでは無い。マイケルはいない?” 今度は二人ともはっきり聞いた。 「車が喋った?」 二人の警官は、嫌なものでも見たような表情で顔を見合わせた。そしておそるおそる銃をナイト2000にむけた。 “無駄です。銃を降ろしなさい。マイケルはここにはいない。……財団本部か?” そしていきなりエンジンを派手に吹かせた。二人の警官が驚いて飛びのいた時、ナイト2000は急発進すると、あっけにとられて立ち尽くす二人の前から見る間に離れて行ってしまった。 「……今の、何だったと思う?」 ナイト2000の姿が見えなくなってしまってからやっとスコットが聞いた。 「車が喋った…ような…。どうする? ボスに報告するか?」 「何て報告するんだ? 無人の車が喋って、勝手に走って行ったってか? そんな事してみろ、『どこで居眠りしてたんだ! それとも飲んでたのか!!』って怒鳴られるのがおちだぜ」 「そうだよな。『さわぬ神に祟りなし』だよな」 二人は唸づきながらも、パトカーに戻るまでに何度もナイト2000が走り去った方を振り返った。 |