White Bird [Part.3]
[PART 3]
63.本部の外---テラス----昼
(中庭のテーブルについていたマイケル。考えに沈んで、前の朝食も時々つつくだけ。デボンがやっ
て来る。手に茶のカップ)
デボン :どうしたんだ、マイケル。君らしくもない。見てくれ、君の為に用意したんだぞ。ス
テーキに卵、適度に脂っこいジャガイモだ……マイケル、心配するな。カーライル先
生が保証しただろう?
(肯くマイケル。そわそわと皿をおしやる)
マイケル :KITTのプログラムを2回もチェックしたんだが、収穫はゼロだった。そっちは?
デボン :少々ながら進展だ。
マイケル :何かわかった?
デボン :ギルバート・コールの事だが、司法局の言う通りの人物らしい。
マイケル :と言うと?
デボン :アンソニー・ソーランとは商売上のパートナーだ。主な役目は、ソランの汚い金の洗
濯さ。
マイケル :ああ、何て世の中なんだ。そう思わないか、デボン? 当局はギルバート・コールが
法を犯していると承知済みだ。俺は奴がステファニーを撃たせたことを知っている。
それなのに、奴には指1本触れられないんだ。
デボン :まあ、落ち着けよ、マイケル。感情だけで行動するとロクな結果にならんぞ……。
マイケル :手出しはしないよ! ただ、感じたことを口に出しているだけさ。かまわんだろう?
財団だってそこまで規制はできないさ!
デボン :まあ、まあ……少し歩こう。(少し間)私が気がかりなのは、ステファニーが生き延
びた時のことだ。
マイケル :どういう意味だ?
デボン :つまり……その後どうするつもりかね? 決着がついた後だ。
(立ち止まって、デボンを見つめるマイケル)
マイケル :彼女と一緒になりたい。
デボン :だが、どうやる? 正体を打ち明けるかね? おとぎ話のハッピーエンドみたいにな
ると思うか?
マイケル :わからないよ。そうならないと言いたいのか?
デボン :良くわかっているはずだ。今の君は敵だらけだ。昔には戻れない。過去を振り向く余
裕はないはずだ。
(マイケルは答えない。しばらくたってから、デボンは注意深く言葉を選びながら話し始める)
デボン :彼女を愛すれば別の選択を強いられるだろう。マイケル、私がフランスでOSSにい
た時、ある女性に……ある素晴らしい女性に会ってね。(思い出に微笑みながら)パ
リ郊外のカフェで出会ったんだ。白い服で、まるで天使みたいだったよ。2人とも若
く、時は少なかった。熱烈な恋におちて…間もなく、私は悟った…選ばねばならな
いとね。何をおいても、私は危険な仕事をしていた……。
マイケル :(しばらくして)彼女を愛しているんだ、デボン。人を愛しちゃいけないのか?
デボン :世の中は動いとるんだ、マイケル。未来を知ることはできん。だが、今、君は選ばな
くちゃならん。きっと正しい道を選んでくれると思うがね。(間)行く前に言っとく
ことがある。気は進まんが、仕方がない。ステファニーは2度逮捕暦があるんだ。両
方ともコールが弁護している。
マイケル :罪状は?……不法横断かい?
デボン :売春未遂だ。残念だが。
(デボンはきびすをかえし、立ち去る。やるだけの事はやった、と言う表情。カメラ:鳩尾をガツン
と殴られたようなマイケルの表情のクローズアップ)
65.コールのオフィス内----昼
(コールが仕事でデスクについている所へマイケルがなだれ込んでくる。その後ろに秘書のクレア)
マイケル :話がある。
(コール、はじかれたように立ち上がる)
コール :いったい何者だ?!
マイケル :俺はマイケル・ナイトだ。
(コールの表情が変る。チラリと不安の影)
コール :オーケイ、クレア。あとは私がやる。
(ホッとして出ていくクレア。見かけは冷静だが、内心怒りが脈打っているマイケル)
コール :さて、用件は何だね?
マイケル :あんたはステファニー・メーソンの弁護をするつもりか?
コール :(間)居場所を知っているのか? 一緒かね?
マイケル :質問しているのは俺だ。答える気があるのか、ないのか?
コール :暴力をふるうなら答えんぞ。
(つめよるマイケル。2人の鼻がふれそうになる)
マイケル :ステファニー・メーソンは売春なんてものとは縁がない。コンピュータの記録に「あ
る」と出たんで、俺は調べ始めた。第一に、誰が何の為に彼女に罪をきせたのか。こ
いつは今調査中だ。第二に、その時だれが弁護したか。これは分かった…あんただ。
第一の答えも見つけるまであきらめんぞ。だから覚悟しとけよ。
(コールが言い返すかと思ったが、何も言わないので、マイケルは背を向け、ドアをバタンとしめて
出て行く。ふるえるコールのアップ)
66.オフィスの外・廊下----昼
(コールのオフィスから出てきたマイケル、立ち止まる)
マイケル :(通信機へ)KITT。俺の思い通りなら、コールは電話をかけるはずだ。盗聴して
くれ。
KITT :わかりました、マイケル。
67.コールのオフィス内----昼
(ダイヤルし終わったコール。ベルが鳴る。答えるソーランのカット)
ソーラン :もしもし。
コール :奴が来たぞ。……あのマイケル・ナイトとか言う男だ。カンカンになって、ステフ
ァニーの前科をでっち上げた犯人を見つけると、息巻いていた。
ソーラン :かまわんさ。勝手にやらせとけ。女を捜す時間が稼げるぞ。きっと見つけてやる。
68.車内----昼
(マイケル、KITTに乗り込む)
マイケル :どうだった?
KITT :ダメでした。専用電話から1本かけたんですが、ジャマーでお手上げです。
マイケル :やるな。
(エンジンをかけ、車を出す)
68.A:財団本部の外----昼
(静かで平和。カメラ、現れたKITTをとらえる。KITT、乗り付け止まる。おりたマイケルは
考え込んでいる表情。)
69.財団・コンピュータ室----昼
(デボンとボニーが取り組んでいる。めずらしくネクタイなしのデボン。上着も脱ぎ、袖も捲り上げ
ている)
デボン :ボニー、どうやら、手がかりをつかんだらしいぞ。組合関係の事件をチェックしてく
れ。
ボニー :O.K。
デボン :ああ、マイケル! 会えてよかった。
(入って来たマイケル、プログラム中のデボンとボニーのところへ行く。デボンをチラッと見て、お
もむろに上着を脱ぎ、袖を捲り上げる。デボン、面白そうに見やる。ニッコリ笑うマイケル)
マイケル :進展は?
ボニー :(リード・アウトを引き出す)これを見て。(デボンへ手渡す)コールが負けた最近
のケース2件だけど……中の1つでコールは大きな労働組合のある一派の側に立った
らしいわ。独立した別組合を作ろうとしたんだけど、失敗したの。勝訴側には、ほら
……アンソニー・ソーランがいるわ。
(リード・アウトを受け取るマイケル)
デボン :あっちこっちに関係しているな。ほら、別件にもかんでる……ショッピング・センタ
ーの用地売却にからんだケースだ。
ボニー :もう少し調べてみるわ。
マイケル :必要なら、俺が手に入れてくるよ。
(歩き出す。)
デボン :マイケル、大陪審はあさってだぞ。
マイケル :わかってるよ。
(肯いて去るマイケル)