White Bird [Part.2]
[PART 2]
33.電話中のアンソニー・ソーラン
(書斎。オープニングで見た顔)
ソーラン :行き先を探り出せ。手出しはするな。
34.KITT内----昼
(2人とも無言。ステファニーは車内をしげしげと見回す)
マイケル :何か探しものかい?
ステファニー:オーブンとサン・ルーフはないかと思って。
(大笑いするマイケル)
ステファニー:本気よ。こんな車はじめて。面白いわ。
マイケル :わかった、わかった。今紹介するよ。……ステファニー。相棒のKITTだ。
(当惑顔のステファニー)
マイケル :ほら、挨拶しろよ、KITT。…俺がキ印だって思われないうちにさ。
KITT :こんにちわ、ステファニー。
(ステファニー、まじまじと見つめる。)
KITT :マイケルはキ印ではありませんよ……少なくとも客観的な目から見れば。
マイケル :ありがとさん。(ステファニーへ)こいつ、喋れるんだ。
ステファニー:車が……しゃべれるの?
マイケル :コンピュータさ。「どうやって?」とは聞かないでくれよ。俺には理解できないし、
する気もない。(間)ところで気分はどう?
ステファニー:おしゃべりする車でびっくりした事は別にして……そうね。よくなったわ。ありが
とう。ホント言うと、あそこから遠く離れるほどよくなるわ。(出し抜けに)どこへ
行くの?
(彼女の表情に、心の奥にある不安を見て取るマイケル)
マイケル :北の隠れ家さ。どうしたの?
ステファニー:なぜもっと早く聞かなかったのかしら、私。……恐いわ。
マイケル :恐いって、何か?
ステファニー:まったく知らない人をこんなに信用しているって事がよ。
(またも目と目をかわす2人。いつまで隠し通せるだろうか、と、不安になるマイケル)
ステファニー:多分この気持ちが答えね……あなたをよく知っているようなこの感じが……。
(無意識に、首にかけた金のハートのネックレスをいじっているステファニー)
KITT :マイケル、車が1台つけてきます。
(KITTの声に、ステファニーはびくっと飛び上がる)
KITT :ブルーのセダンです。
ステファニー:さっきの男達かしら?
マイケル :おそらくね。KITT、登録ナンバーと車内映像を出してくれ。
(光りがきらめく)
KITT :はい、マイケル……こちらが車内、それからナンバーです。
マイケル :じゃ、行くぞ。つかまってろ、ステファニー。
KITT :マイケル、前方に障害物があります。
マイケル :わかってるよ、KITT。はなすなよ、ステファニー。
(マイケル、アクセルを踏み込む)
36.セダン
(加速する。)
37.山際の道路----昼----いろいろなアングル
(矢のように走るKITT。後を追うセダン)
38.ハイウェイから離れていく狭い横道----昼。
(KITT、90度ターンで横道へ入る。道を塞いでいる道路工事の土砂の山へまともにつっこみ、
やすやすとはね飛ばす。通りかかった徒歩旅行者、驚く)
39.峡谷----昼
(前方道路無し。KITTが現れ加速し、谷を飛び越える。向こう側の舗装道路に着地、走り去る)
40.----省略----
41.峡谷
(セダン、近づくが、急ブレーキをかけ、谷の端ギリギリで横滑りして止まる)
42.KITT車内
KITT :どうでした?
ステファニー:ステキ!
マイケル :何か分かったか、KITT?
KITT :ゼロです。
ステファニー:ちゃんとユーモアもあるのね。
マイケル :誉めすぎだよ。
KITT :お世話さま。
(一同笑う)
43.セダン
(ハイウェイへ戻っていく。電話口で弁解するドナー)
ドナー :(受話器へ)奴の車とは性能が違いまさぁ……どうしろってんです?
44.ソーラン
(電話中)
ソーラン :わかった。もういい。行き先は知れている。(書類を見る)4、50マイル北の山中に
隠れ家があるらしい。
45.ハイウェイ----昼
(ハイウェイに乗り入れ、北に向かうセダン)
46.山小屋の外----昼
(過ぎの木や谷、下生の薮などに風景が黙然に広がった、平和にみちた小屋。木漏れ日があたたかい
日だまりをなげかけている。正面にのりつけるKITT)
47.KITT
(車から降りる2人。背伸びをして周囲を見回す)
マイケル :さあ、ついたぞ。
(信じがたい、と言う表情のステファニー)
ステファニー:なんてきれい! 暖炉もあるのかしら?
マイケル :お望みとあれば。
ステファニー:モチよ!
マイケル :では造ってしんぜましょう。
ステファニー:(笑う)うれしいわ。
(マイケルはスーツケースと鞄を取り出す)
48.玄関のドア
(鍵をあけるマイケル。ドアが開くと、2人ともハッと立ち止まる)
49.2人の視野からのアングル
(完全にととのえられた室内----天井梁、心地よさそうな家具類、石造りの暖炉。寝椅子で熱い茶を
すすっているデボン。)
デボン :良く来たね……1時間の遅刻だが。
ステファニー:(マイケルへ)誰なの?
マイケル :ボスさ。
ステファニー:まあ。
(2人の所へ来るデボン。)
デボン :驚きすぎて口もきけないようだから、自己紹介させてもらおう。デボン・マイルズで
す。ステファニー・メーソンさんですね。
ステファニー:ええ。
デボン :はじめまして。
ステファニー:こんにちわ。
デボン :どうぞお楽に。ところで……お茶はいかがかな。失礼だがマイケルと2人で話した
いのだが。
ステファニー:もちろん、どうぞ。荷物をといてくるわ。
(チラリとマイケルを見やり、外へ出て行くデボン。マイケル、かすかに顔をしかめ、後を追う)
50.小屋の外----昼
(階段を降り、話しながらゆっくりと歩く2人。)
デボン :あの娘は君の正体を知っているのか?
マイケル :(間)いいや。
デボン :それでいい。知らせるなよ。
マイケル :デボン。司法局の奴等は彼女を陥れる気だ。たとえ証言してボスを売っても共犯にさ
せられちまうんだよ。事件の黒幕は彼女の証言で自分がヤバくなるのを知っている。
だから大陪審の前に消しちまおうって腹なんだ。
デボン :よし。例の尾行車の割り出しから取り掛かろう。(間)マイケル、こいつは大変な仕
事だぞ……-愛する者を救うのはな。これが君たち2人でなければ一切禁じるところ
だ。
マイケル :恩に着るよ。
(しばし見つめ合う2人。やがて、アドリブで別れの事場をかわし、デボンは小屋の後ろにとめた車
へ歩き出す。あとを見送ってから、中に入るマイケル)
51.小屋の内----昼
(マイケルが入ってくる。暖炉で薪がパチパチ燃え、薔薇色の光をなげている。ステファニーが台所
から出てくる。手にはサンドイッチの皿)
ステファニー:ほら、おなかすいたでしょ? 「うん」って言ってよね……だって、1人で食べるの
はつまらないもの。
(皿を暖炉の前の敷物に置くステファニー。近寄るマイケル。この不意打ちにおお喜び)
マイケル :うん。ペコペコだ。
(手を止め、彼を見つめるステファニー。困惑の表情)
マイケル :何だい?
ステファニー:(そっと)前に同じことを同じ人に言ったなあ、なんて思ったことない? ……ウ
ソみたいだけど、今、ちょっとそんな感じだったの。
マイケル :まさか……疲れているんだよ。
ステファニー:そうね。命がけで罠から抜け出そうとしてたものね。(自嘲気味に)私を見てよ。家
さえなくしたわ。1人では何もできない……あなたに頼ってばかり。(間:炎を見つ
めながら)最後に頼った人もマイケルって言う名前だった……。マイケル・ロング…
もういないけど。
(マイケルの目の奥まで見つめるステファニー。まるでそこに答えを見つけようとしているかのよう
に……。指はまたもや首のネックレスをまさぐっている。真実を打ち明けないでいるのが苦痛にな
ってきたマイケル。長い、くらい沈黙。)
52.山腹----昼
(食事を終えて、散歩している2人)
ステファニー:あなたは私のことを何でも知っているのに、私は何も知らないわ。不公平よ。
マイケル :そのうち教えるよ。
ステファニー:今晩よ。
マイケル :たぶんね。
ステファニー:それまで花を摘みたいわ。こんなにいい日なんですもの。(ためらって)かまわない?
マイケル :もちろん。でも遠くへはいかなでくれよ。
(アカンベェして跳ねていくステファニー。マイケルは笑ってその姿を見送る)
53.----カット----
54.A:(アングル:そのまま)
KITT :(通信機を通じて)マイケル、尾根に男が2人います。1人はライフルを持っていま
す。
マイケル :(叫ぶ)ステファニー、小屋へ入れ! 早く!
(顔を上げるステファニー。問い返したりせず小屋へ向かって走り出す)
55.マイケル
(KITTへ走り出す。)
マイケル :(通信機へ)KITT、カバーだ!
56.KITT
(動き出す。タイヤが回り走ってくるステファニーの方へ出て行く。銃声が1発、続いてもう1発。
撃たれて倒れるステファニー)
57.----略----
58.ドナーとブレイク
(山腹を這いもどっていく。彼女は死んだと思っている)
59.----カット----
60.私立病院外----夜。(ストック分より使用)
(こじんまりした奥まった感じの建物)
61.病院内----ホール----夜
(ボニーとマイケルが、術後安静室の外にいる。心配そうなマイケル)
マイケル :もう出てきてもいいはずだ。何かあったんじゃないか。
ボニー :なら知らせてくれるわ。予定よりちょっと手間どっているだけよ。
マイケル :そうだと思うけど……(行きつ戻りつ)ただ待っているだけなんて……。
ボニー :ただじゃないわ。あなたがここにいるって事が大事なの。今じゃ彼女に残されている
のはあなただけ。そのあなたがここで待っているって事がすべてなのよ。
(マイケルは考えて、肯く。苦労して微笑みらしきものをうかべる)
マイケル :ボニー。2人とも大丈夫だから、君は帰って休めよ。
(ボニーが答える前に、カーライル医師が室から出てくる。相手につめよるマイケル)
マイケル :どうですか? 状態は?
カーライル医師:大丈夫。良くなるよ……理論上は。
マイケル :(言葉を聞きとがめて)一体どういう意味です?
カーライル医師:行った通りだよ、マイケル。……銃創は問題じゃない……。理由は不明だが、ま
だ意識がもどらないんだ。倒れたときに頭を打ったらしい。…軽い脳震盪だと思う
が。変化があれば知らせるよ。
(カーライル医師はホールを歩いていく。後を見送るマイケルは、しばしためらった後、安静室へ入
る。)
62.安静室----夜
(あかりを弱めた室内。ステファニーのベッドのかたわらに腰をおろすマイケル。聞こえるのは、心
拍・呼吸・脳波をモニターしている機械の音のみ。ズラッと並んだ機器を見、それから視線をステフ
ァニーの顔に移す。美しく、なぜかしら安らいでいる表情。手をのばし、彼女の手にふれ、握り締め
るマイケル)