<<<Back ▲UP ■ 野島昭生氏にインタビュー ■

The 20th anniversary special program

■ ナイトライダー生誕20周年・特別企画

■ あの「K.I.T.T.」の声を演じた野島昭生氏にインタビュー!


ナイトライダーがアメリカで初めて放映されたのは1982年。2001年の今年で「ナイトライダー生誕20周年」となりました。それを記念して、K.I.T.T.の日本語版の声を演じられた野島昭生氏にナイトライダーについてのインタビューを行いました。(敬称略)

事前の準備が不十分だった事もあり、緊急アンケート「野島さんに質問をするとしたら」で寄せられた内容を中心に質問させてていただきました。

ナイトライダーも一時期は忘れられたような存在でしたが、ここに来てまた露出度が高くなっているんですよ。雑誌でもちょっとした特集を組まれたり、ナイト2000のレプリカを作られた人や現在作っている方もいらっしゃって。子供の頃ファンだった人が大人になって、現場で実際に動くことができるようになったからだと思うんですが。

野島: そうですね。最近あっちこっちで再放送もやっているんですよね。
現在関西方面でやってます。それから最近テレビ東京でも日曜洋画劇場版を1〜3まで放映しました。そう言うのを見て「当時幼稚園だった」と言った若い人からも「もう一度全部みたい」という声もあがっています。

野島: 幼稚園ねぇ(笑) ……こっちは殆ど忘れてるけどね。

そうですね。随分昔の番組ですから。一応こちらで質問をいくつか用意させていただきましたので、分かるところで色々お聞かせください

野島: どうぞ、何でも聞いてください。

まず、ナイトライダーのK.I.T.T.役に決まった経緯は何だったんでしょう。

野島: KITT役に決まった経緯と言うのは別に無いんですよ。丁度このディレクターとプロデューサーがそれぞれ知っている人で「野島がいいんじゃないか」と。

最初「パイロット版(誕生編ではなく、テスト版の意味)」って言う1時間もののをとったんですよ。あとの質問にも通じるんですけど、最初ああいう放送番組って言うのは1回ためしに作ってみるんですよね。それでディストリビューターとかそう言うのが局に売り込んだりするわけです。

その時は佐々木功さんじゃなくて……誰だったっけな、柴田p彦って言ったっけ? で、彼がマイケル・ナイトをやって、それで1回ためし取りを作って、それを局に持って、んじゃこれをやろうと言うように最初作ったんですね。で、その時にどうやって作ろうかって言う事で、決まってから今度ディレクターと2人で考えたんですよ。この役の作り方って言うのをね。

で、向こうの英語版って言うのはこうフランクに友達風にこうやるんですよね。「おい、どうしたマイケル。おい、どうなんだよ」とか、そう言う感じでしゃべってるんですけど、それで最初とったんですよ。そしたら、局の方では「やっぱりコンピューターなんだから、ちょっとこうではいかないだろう」と言う話になって、それでまぁ向こうからクレームって言うか、もう1回それをとろうっていう。

じゃあわかったよ、ってこっちもちょっと癪に障って、じゃあずっとコンピューターにしちゃおうって。「マ・イ・ケ・ル・ ド・ウ・デ・ス・カ・…(カタカナ棒読み風)」って。

そして、それ出したのね。そしたら「それもないだろう」って事になったんですね。

じゃ、その中間をどうやって作るかって言う事でねぇ。で、そのディレクターと色々話してて、色んな試行錯誤しながら考えて、結局「そう、あのマイケルに惚れちゃったらどうだろうか」って言う。

まぁホモセクシャルじゃないけれども、親友よりちょっとこう、兄弟のお兄さんみたいに。でも兄貴は奔放だから何でもやっちゃうから、ちょっとそれを止めなくちゃいけないと言う弟がいると言う、何かそう言う感じでちょっと作ってみようかって言う事で、「マイケル、いけませんよ」って言う、そう言う感じのものを作り始めたんです。

だから基本的にベースにあるのはマイケルに、まぁ変な意味じゃなく惚れている、と言う所を作って、そこからああいう形ができたんです。だから英語版とはまったく違う形ができちゃったんですよね。

それの中でも「パイロット版(誕生編)」……一番最初の話ですが……この時はわりと何か距離があるって言うか、ちょっと硬い言い方だったと思いますが。

野島: そうですよね。

それがだんだん本当に優しい接し方って言うんですか? そうなっていったのは何か途中であったんでしょうか。硬い感じがしたのはその1回だけなんですが。

野島: 最初の1回だけでしょ? あれは結局まだ試行錯誤の中で、ディレクターと僕とでこう迷ってる所で、局の方の関係者と色々あるから、じゃ、そこのところでまだこういう形にしよう事でね。それで、少しまだコンピューターっぽく作って行こうって言うんで、まぁ1本目はそう作り方して。でもやっぱり友達関係の方がいいよね、ずっと見るとやっぱりそう感じだって言うんですよね。じゃあそう言うことで作って行こうって言う、だんだん友達って言うか兄弟って言うか、兄貴と……少しずつ変えて行けば、いつのまにかそうなっちゃうから大丈夫だって言う事だったんですね。

次に「台本に書いてある事以外に、アドリブなどはあったんでしょうか」と言う質問が来ているんですが。特にマイケルとの掛け合いのときなどに。

野島: それはディレクターと考えながら、「じゃぁこのセリフの語尾をかえよう」とか、僕個人で「こうしたらどうか」って言うのにディレクターのOKが出ればそれはやっちゃうし、ディレクターが「これはこう変えようよ」って言うので「ああ、そうだね」で変えるって言う部分は多々ありましたね。

あと、これもかなり重複すると思いますが、野島さんご自身でとかスタッフの方々でKITTの役作りに苦労されたと言うのは?

野島: ええ、どう言う形につくって行くか……本当にあの形はオリジナルですからね、言ってみれば日本語のオリジナルだから、あそこまで作り上げるのはやっぱり苦労しましたよね。

あと、録音の時一番苦労したのが、今みたいに技術が発達していないって言うか、マイクのそばでやってると拾っちゃうんですよね、こっちの声とこっちの声を。そうすると録音だめなんですよね。だからラストテストまでは功ちゃんと正(しょう)さん……中村さんとか全部一緒にこうやってるんですけど、本番になると僕はずっと後ろに……ミキサー室に入っちゃうんです。一緒にとれないんですよ。それで、佐々木功さんって言うのはやっぱりどっちかって言うと感性の芝居する人だから、本番の方がちょっとテンション上がるんですよね。と、それを後ろでこう聞いてなくちゃいけないんです。「あ、こういう言い方したから、じゃぁこう出よう」「こういう言い方したからそれじゃぁこっちから出ようか」って言う。それをずーっと型取りしていくわけですよね、二人の会話を。

最初ついたてとか色々やったんですけどやっぱり色々拾っちゃってだめだって言う事で。

それでまぁ1ロールって言うコマーシャルの間のロールみたいなのをとると、終わったらみんなパっと出て僕がパっと入って、その功ちゃんの感覚をこう残しといたまんますぐ本番行ってもらうんですよね。そうすると「あ、こういう風に言ったな、じゃあこう返そう」って、そうするとこううまく絡むんですよ、セリフがね。


じゃあ、佐々木さんの部分は全部佐々木さんが一人で喋られて、で、野島さんがその後で入ってそれに合わせて……と。ではタイミングを取るのも結構大変だったんでしょうね。

野島: あとのずれは多少の調整はできるんですけど。その絡み、セリフの絡みですよね、一番問題なのは。だから「あ、強くでたな、じゃぁこっちはこう出てやろう」「むこうは優しく出てきた。じゃあこうやって出てやろう」って言うのは……その、セリフのキャッチボールって言うのはね、なかなかプロとしては絡みを大切にしますからね。

日本ではやはりあのマイケルとKITTの掛け合いがとにかく良かった、というのが殆どなんですよね、意見として。

野島: だからそれは僕らの……自画自賛じゃないけど僕らが「やった!」って言うのがあったんですよね。日本語版でひとつこの作品が良くなったって言う。

そうですね。日本人のファンにとってはその部分が絶対に「とにかくこれ!」って言う感じでしたから。逆に言ってしまうと、「KITTが出てきたら野島さんじゃなきゃいやだ!」って言う感じなんですね。

野島: それは嬉しいですよね、僕としてはね。

で、マイケルにしても佐々木さんじゃなきゃいやだって言う。逆にハッセルホフって言う役者が他の番組に出てきたら、「佐々木さんの声じゃないからいやだ」でもって、「一緒にKITTが居ないからもっといやだ」って、そうなっちゃってるんですよ。それくらいすごいコンビネーションが良かったと言う事で、これはもう男性、女性に限らず、ファンの方はみんなそういいますね。

野島: そりゃ日本語版作った方としては万々歳って言うかね、「やった!」って言う感じしますよね、そう言う意見を聞くとね。

KITTの声をなさってよかったこととか特に嫌だったことはありますか。

野島: 嫌な事は特別無いんですけどね、良かったのはそれに派生して色んなほかの……「あの声」でこの仕事やってくださいって言うのはまぁいくつかありましたね。ゲームも作ったんじゃないかな、ひとつ。大昔で売れ無かったらしいけど、ゲーム絶対あるはずだよ、さがせば。何かひとつね、入れたような気がするんだよね。

PCエンジン版ですね。人気の無いゲームでしたが。あと、数年前ある会社の車のセキュリティの声を入れられましたよね。

野島: そうそうそう(笑) あれは大阪のね、ちっちゃな町工場みたいな所に行ってね。売れたのかな、あれ。

かなり売れたらしいですよ。やはりナイトライダーのファンの人で車改造したいとか思っている人なんかが、とりあえず野島さんの声で返事してくれるからって。つけないけど買ってみたとか。

ところで今アメリカでハッセルホフが権利を買って、続編を作るって言う計画立ててるんですよ。Super Knight Rider 3000って言うタイトルで。

野島: 赤いやつかな?

いや、あれは「新ナイトライダー2000」って言うのでナイト4000が出てくるのです。あれは日本語音声化はされてませんよね、字幕しかないですけど、それじゃなくて、彼自身が企画たてている話が持ち上がっているんです。まだスポンサーがついていないらしくて、まだ作成もされていない話なんですけど、現在のプロットではその中にK.I.T.T.も出てくるんです。で、もしそれが映像化されて日本に入ってきて、音声化されると言う事になった場合はやはりやってみたいと思われますか?

野島: そりゃやってみたいですけど……やってみたいって言うか是非やりたいけど、それは局が輸入して「違う人使おう」って言ったら……。日本だって簡単に……シルベスター・スタローンだって誰だって簡単に局によって(声が)変わっちゃうから。こっちがやりたいって言っても、局の方のプロデューサーがOK出さなかったらね。

その時(もし新作が日本で放映されることになったら)はナイトライダーのファンの人にその局にワーッと文句を出してもらえば、ちゃんと僕の方に来るんですけどね(笑)


ではそう言う話が聞こえたときはやはり(ファンが)アクション起こさなければばだめですね。

で、質問が始めに戻ってしまうんですが、最初の「デモ」バージョンで(マイケルが)佐々木さんじゃなかったって事ですが、それは単にスケジュールとかの関係だったんですか?

野島: いや、それはあのよくやる手なんですけど、別にそのままオンエアしないで、こういう作品があるって言うんで、仮に1回見せるために作るだけなんです。局へのプレゼンみたいな形で。それはもうまったく品物として使うわけでも何でもないんです。

それで放送分では佐々木さんになったんですね。もう一人の方がどんな感じだっ たかが分からないので何ですけど、実際には佐々木さんで大受けだったなぁと。

野島: 功ちゃんでピッタリだったよね、あれね。あの役が。

一回日本に来るって言ってたんだよね。デビッド・ハッセルホフ。でも結局来なかったんだ。で、車だけ来たんだよね。当時7台くらいあって、そのうちの1台が来たんじゃないですか?

僕も一回あれにのっかってみたんだけど、ハンドルがこう丸くないんだよ。こうなって(上が切れて)。テレビ朝日のちょうど……ミュージック・ステーションじゃない、前は何て言うんだろうなぁ、音楽番組。ナントカって番組でね、で、ナイト2000が来たって言うんで、その生番音楽番組で、僕が副調整室に行って、リハーサルで1回……あの頃チェッカーズか何かががインタビューするって知ってる?


うちのBBSに来てくださる方が書き込んでくれてました。

野島: あ、本当!?

現場でむこうが質問するんですよ。車に。するとこっちで……それはもう完全にアドリブ(で返事をする)だから。むこうがリハーサルで「こういう事聞きますね」なんて言ってたんだけど、本番になったら絶対違うんだから。でね、こっちが困るような質問をわざとする。そうしたら、その時は「それは、秘密です」ってねそう答えてね。アドリブで瞬間に出るんですよ(笑)


そうだったんですか。大変だったんですね。

野島: 生本番だったから画面みながら。

あの時のが撮影で使われていた本物の車だったんですね。

野島: 「新ナイトライダー」のニューバージョンの何かカチャカチャって出るやつはねぇ。

あ、SPMですね。あれはちょっと……

野島: ははは……。ちょっとあれはね。ちょっとアニメチックになっているかなって言うか……。

日本の変な特撮の影響受けちゃったかな、みたいな。

野島: そうそう、あそこまでやらなくてもいいんじゃないかってちょっと思ったけれども。

あれ、評判悪かったですよね。

野島: そうですよね。

第3シーズンまでとあの第4シーズンの放映との間には東京でも9ヵ月のスペースがあるんですよね。

野島: ええ。こっちも一回とるのを止めて休みにはいってましたよね。

あれは何かあったんですか? それとも放送局の関係ですか?

野島: 放送局の関係でしょう。オンエア枠って言うか、最初の契約して、その時間でやって、切れたからその間違う番組やって、で、またって言う。

あと……これはちょっと野島さんにお聞きしてもだめっぽいですね。……「マイケルの浮気防止法」

野島: ははは。それはちょっとわからない(笑)

ナイトライダーはアメリカでは84話、日本では70話ほど放映されたんですが、その中で特に印象に残ったこととかってありますか?

野島: それが思い出そうと思ったんだけど殆ど思い出せない。やはり第1話の印象はありますけどね。あと、部分部分でしか覚えてないんですよ。ほら、似たような車の、かわいいKARRが出てきたり、とか、どっかにつかっちゃって車が真っ白になっちゃって、とか溶けちゃうとか、そう言う部分部分は覚えているんですけどね。全体としてどれって言うのは本っとうに思い出さなかったですよね、この質問読だ時に。

そうですねぇ。こう言っちゃ何ですけど、同じような話をグルグルまわしてますから。

野島: 勧善懲悪でねぇ。

あと、殆ど人が死なない番組でしたよね。


ええ。まず主人公が銃を撃たないですね。

野島: 撃たないですね。必ず捕まえといて、あとは警察にまかせよう、みたいな。ああいう所がいいんじゃないかなぁ、と思ったんですけどね。

ターゲットの年齢層がファミリー向けに近い線だったようで、マイケルのお色気シーンも殆ど……

野島: 殆ど無かったですね。

同じメカものでも同じ頃やっていたエアーウルフとかだとちょっと年齢層高めで、機関銃を撃つとかありましたけど。

野島: あれを日本でもぶつけてきたもんね。オンエア時間で。東京では同じ時間に日本テレビとテレビ朝日とボーンとぶつかったんですよ。な〜んでぶつけてくるんだぁって感じで。

ターゲットはちょっとずれていたと思うんですけど、どちらもハイテクなメカニックを主人公が操るという部分ではにていたから、両方見たい人は随分大変な思いをしたらしいですよ。

野島: あの当時は珍しいですよ。今はもう殆ど無いですもんね。夜の8時のゴールデンタイムにああいう洋画をやるって言うのは。あの頃はもう本当に声の中村さんと功ちゃんと俺と……あの時最初藩恵子がやってたんだっけな?

最初作ってた時、2時間ものの時ず〜っと、これシリーズ物になる時はぜったい夜中なんか止めようねって言って。俺達反対するよって言ってさ。出演者一堂でディレクターと局のプロデューサーにもうガンガン言って、絶対これシリーズになったらオンエア絶対ゴールデンタイム! そうじゃなくちゃ俺たちやらない!って。


それはやはり内容から見ての事ですか?

野島: うん。まぁ面白いし、その方が……当時からしてなかったですから、あまりね。だからここへ持っていくと面白いよって平静から圧力かけて、まぁプロデューサーも飲みながらこう話してますからね。

そうですね。あの頃までですね、ゴールデンタイムに洋画が入るのは。

野島: もう録音終わると必ず中村さんも功ちゃんも僕も酒好きだから、必ず「お疲れさん」でディレクターもプロデューサーも毎っ回飲んでたよ。そう言う意味じゃ仲良かったよ。

さて、最後にファンの方に一言お願いします。

野島: まぁ……一言って言うのは今後ともご支援ご指導のほどをって言うか、ね(笑) こうやって盛り上がってもらえればまた何か…いいんじゃないかと思うんですよね、こちらとしても。どんどんあったらこっちも返事しますよ。

で、何て言おう。今やってないから難しいね。


「これからも応援してくださいね」 再生の為にはRealPlayer(R)が必要です。
今日はお忙しい中、ありがとうございました!


2001年6月9日 株式会社シグマセブンオフィスにて。
野島さんの写真や声は「シグマセブン」のサイトにあります。是非一度訪問してください!