「まだナイト2000は見つからんのか!」 ロスアラミトス海軍航空基地内のオフィスの中を、クレメント次官補はイライラしながら歩き回っていた。 病院の駐車場からナイト2000が姿を消してから既に10時間以上経っている。 この間、夜中にもかかわらず、サンダース准将から何度も問い合わせがあり、その都度クレメントが苦しい言い訳を繰り返していた事をデボンも知ってはいたが、クレメントの准将に対して卑屈にすら見える態度に、いささか腹を立てていた。 しかしそんなデボンの気持ちは知らず、クレメントが言った。 「君は何かあったら間違いなくナイト2000を破壊すると言ったが、こんな事ではとうていおぼつかないじゃあないか」 デボンはソファに座ったまま、クレメントを見た。 「レン! 少しは落ち着いたらどうだ。さっきからそう熊みたいにウロウロされてはこっちまでイライラする」 「しかしだね。今あの車が危険な状態になったら、いったい誰が責任を取ると言うんだ」 「責任なら私が取る! だいたい君は何だ。頭からナイト2000が危険だと決めつけとるが、これまでにも君たち国防総省が何度かマイケルとKITTに助けられていると言う事も忘れんでもらいたいな!」 「そ…それは……」 デボンの反撃に合って、クレメントの先程までの勢いは急にしぼんでしまった。 逆にデボンの方は、ここまで一応クレメント達の計画に従っては来たものの、国防総省側のあまりに威圧的な態度にいいかげん我慢ならなくなっていた。それがここへきて一気に爆発したように勢い付いた。 「それにだ、あの海軍准将だか何だか知らんが、あの男のメッセンジャーボーイみたいな真似もやめたらどうだ! まったく、私をこんな所に缶詰にして…。これで何事もなく終わったら、この事は忘れんからな…」 最後の言葉はさすがにデボンも口の中で呟く程度に止めたので、クレメントの耳には届かなかったらしい。 それでもクレメントはデボンの視線を避けるようにしながら、 「ともかく、だ。今日中にナイト2000の行方がつかめない場合は軍の方で手配する。いや…、君たちを信じないと言っている訳ではない」 と、デボンが立上がって口を開きかけたのを手で制して、 「が、これはサンダース准将が決めた事だ。軍が動いた場合は、私もナイト2000の安全は保証出来んからな。君も早くあの車を見つけ出す指示をした方がいい。では私はちょっと用があるので……」 デボンに何か言い出される前に、クレメントはオフィスを逃げ出した。 残ったデボンは厳しい表情でクレメントが出ていったドアを見つめた。 クレメント次官補にはああ言ったものの、実際いまだにナイト2000の居所をつかむ事が出来ないでいるのは予想外だった。 軍が動いてKITTが発見された時、いったい何が起きるのか……これ以上事態が悪化しないと良いのだが。 −−KITT。いったいどこにいる……−− |